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洋服は作って楽しい、 着てうれしいに限る part.3

2021.02.04
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香田マジックを取り入れた著書


ララソーイングエテは外観も内観も白を基調にし、アンティークのイスやパーツなどを所々に入れ、居心地のよい空間に。ミシンはひとり1台ずつ使用できるので、待ったりすることがなくスムーズに作業を進められる。



2008年にPHP研究所から声がかかり、著書『子どもに持たせたいバッグ&小物』を発売した。すぐに次の本の依頼がくるだろうと待っていたら、声がまったくかからない。電話も鳴らない。

「でき上がった本を見たときに、洋服のデザイナーなのに、布小物だけのこの本は自分らしくないなあと。このままでは悔しい、洋裁の本を出したいと思って」

本屋さんに行き、たくさん洋裁本を出している文化出版局に連絡してみようと決める。

「電話をかけて洋服の本が作りたい、絶対に売れる本を作るからと言いました」

こうして洋裁本の1冊目『好きな布地で好きな服』を出版することに。教室の仕事で培った“香田マジック”を取り入れた洋服は多くの人に好まれ、出された洋裁本は10年間で10冊に及ぶ。

香田さんの本の特長は、ひとつのパターンからいくつもの作品が展開できること。シンプルなベストでも、前身頃と後ろ身頃のパターンを流用してフードをつけることもできれば、スタンドカラーにもなる。また、スタンドカラーのベストに袖をつけてジャケットへの展開もできるといったように。

「洋裁って、型紙を写し取るのが本当に面倒だと思う。だからがんばって写した型紙を使い回して楽しめたらいいと思って」

洋裁は作って楽しい、着てうれしいに限ると香田さんは言う。その思いが“香田マジック”をはじめ、さまざまなところに現れている。

自ら作ったものを着用し、プロモーションを行う洋裁の先生は多い。しかしながら香田さんは一切しない。

「仕事は仕事。嫌になるほど考えてデザインし、パターンを引いているから、自分のための洋服は仕事を始めてから作ったことがない。辞めたときにきっと作りたくなると思う」

月10回の教室、書籍や雑誌のための作品づくり、パターンや作り方解説の作成と、休みなく走り続ける姿を見ていると、その日はずっと先になりそうだが、香田さんが自身のためにどのような洋服を作るのかを、いつか見てみたい。




同じ前身頃、後ろ身頃を使って3種類の洋服に。(上)フードをつけたベストに、(中)衿をスタンドカラーにしたベストに、(下)スタンドカラーと袖をつけてジャケットに。



大の犬好き。教室名ララソーイングエテのララは、一昨年に亡くなった愛犬の名前から。エテは今の愛犬の名前。













プロフィール

香田あおい(こうだ あおい)

京都市在住。アパレルメーカー勤務を経てフリーランスに。

2006年に洋服、バッグ、生活雑貨などをリネン素材を中心に作るソーイング教室「Lala Sewing ete(ララソーイングエテ)」を設立。アパレルの合理的な縫製技術と独自のアイディアにより、簡単で楽しいソーイングを伝授している。

著書に『長く着られる大人服』『私の、ブラウスプルオーバー』(日本ヴォーグ社)、『きれいな服』『大人だから、甘い服』(文化出版局)などがある




『手づくり手帖』Vol.17より

撮影/大西二士男



ソーイングチーム編集スタッフ

ライタープロフィール

・ソーイングチーム編集スタッフ

日本ヴォーグ社ソーイング本の編集者たち(20~40代)。

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