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空飛ぶ羊に導かれて 竹崎万梨子さん part.2

2021.02.12
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モンゴルの羊は空を飛ぶ

モンゴルの原種「空飛ぶ羊」は竹崎さんの創作心を刺激したばかりか、夢も広げてくれた大切な導き手だ。写真/プレブドルジ・アリューンダリ



「英国羊毛の原種で毛質が好きなのはウェルシュマウンテンとか、チェビオットなどの山岳種系、ヘブリディーンやジェイコブなどの古代種系ですね。ウール以外ではヤク、リャマ、カシミヤもよく使います。」

メリノのいいところは程よいふくらみと滑らかさがあって、作品になったときのバランスがいいことだという。 「スピニングパーティ(羊毛などの素材や紡ぎ道具などを販売するマーケット)の会場でモンゴルの羊やライフスタイルを紹介するブースで羊毛を買いました。それがモンゴルの原種〝空飛ぶ羊〟です」 真冬にはマイナス40度ともいわれる厳寒のモンゴルの草原に適応しており、ゲル(移動式家屋)を作るときのフェルトに使用されている羊毛だ。 「その温かさは半端じゃないんですよ。毛質はケンプ(死毛)が多く、硬くて、一般的には評価が低いかもしれませんが、繊維の中が空洞で空気を多く含んでいるので、通気性や保温性が抜群です。名前の由来は本当に岩から岩をめがけて飛ぶからだそうです。日本在住のモンゴル人、プレブドルジ・アリューンダリさんから買っています。メリノと空飛ぶ羊の交雑種であるモンゴリアンメリノも彼女から仕入れています。カシミヤみたいな細い糸が入っている、太い糸と細い糸が交互に現れ、面白い糸になります。彼女を通してモンゴルの文化に触れられたのも貴重な体験でした」

こうしてポンタさん、アリューンダリさんという羊毛の伝道師たちからもたらされた魅惑の素材を得て、竹崎さんの作品はさらに輝きを増していった。


ブルーの宝石のような色。これは同じ原毛を使って平織(右)と杉綾織に織り分けた。織り方によって、微妙に光の当たり方が変わる。カシミヤだから発色がいいという。



織り機には平織のストールが。「微妙な感触は、織り機から外して、糸の始末をして、縮絨してみないとわからないです」



『手づくり手帖』Vol.10より

撮影/姉崎 正

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ライタープロフィール

・ソーイングチーム編集スタッフ

日本ヴォーグ社ソーイング本の編集者たち(20~40代)。

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