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北の国のリトル・モリス 岡 理恵子さん(点と線模様製作所) part.2

2021.03.31
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おばあちゃんのそばで

「幼少のころ、鍵っ子だったので、祖父母の家にいることが多くて。その祖母がセーターを編んでくれたり、そんなおばあちゃんの横でごろごろして安心できる幸せな時間の中に手芸があったんです。誰かのことを想って編んだり刺したりという手づくりの感覚が好きでした」

大学は美術系の学部を選び、空間デザインを専攻した。「勉強する中で自分は新しい空間を作るのではなく、今住んでいる場所を住んでいる人がカーテンやテーブルクロスなどを取り換えて空間を作るのが好きなんだと感じて」模様を作りたいと先生に相談したところ、ウィリアム・モリスの壁紙を先生代わりにして、オリジナルの模様作りを勉強することを勧められた。

「模様を探して、モリスのように木版を作って、本の図版を頼りに、模様のつながりを解読したり、モリスは散歩しながら模様の種を見つけたんだとか、何だかだんだん身近に感じるようになっていきましたね」

岡さんが追いかけていたテーマは、専門のコースがなかったことから、独学で勉強した。

「どうして模様を作るの、と自問自答しながら、その意味探しからやってきて、視覚的、心理的に模様がどう見えるのかも勉強しました。上に伸びていくような模様は人の気持ちも上がるのだとか、その模様が人間を守ったりすることもあるし、模様自体が言葉やその人のルーツを表すことにつながったり、そんなことも学びました」

とりわけ手芸的なものへの思いは、祖母との時間とともに深く心に育まれた。

「手芸は誰かのため、という純粋な人への思いが詰まっています。思う相手が家族だったらなおのこと、そういうふうに感じます」

昨年秋には小社より、手刺しゅうの図案集『ten to senの北国の模様刺しゅう』を上梓した。

「手仕事って、その人のフォークロアが垣間見られるものだと思うので、用途、使う人のことを想像しながら、私の想いも反映させて、季節に合わせた図案を作るように心がけました」


  

「bird-garden」の原画と麻布に刺しゅうした生地。プリント生地から刺しゅうに起こし直したもの。


  

「紫陽花」の原画とプリント生地、縮小して刺しゅうを施した生地も。プリント生地は初期のもので、インテリアを意識していた。シンプルで明確な感じの模様づくり。


  

「tanpopo」小樽から札幌に向かう列車で車窓から見つけたタンポポの群生。一瞬の記憶をプリントにとどめて。


『手づくり手帖』Vol.08より

撮影/森谷則秋



ソーイングチーム編集スタッフ

ライタープロフィール

・ソーイングチーム編集スタッフ

日本ヴォーグ社ソーイング本の編集者たち(20~40代)。

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