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北の国のリトル・モリス 岡 理恵子さん(点と線模様製作所) part.3

2021.04.14
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北のテキスタイル人気沸騰

岡さんのテキスタイルは、現在活躍中のソーイング作家たちに、ことのほか人気がある。「点と線」で作り出される、どこか懐かしい手描き風の模様と作家たちの感性が響き合うのだろう。何人もの作家が自らの著作本に岡さんの生地を採用している。

プリント生地も機械刺しゅうの生地も、自ら、関連書を頼りに電話一本で工場を探し当て、パターンを送って足を運び、仕事をお願いした。百貨店での展示販売やギャラリーでの委託販売という独特の形を確立し、卸し売りはせず、1か月にどれだけ売れたか自らが把握できるような売り方を心がけている。一方、手芸メーカーやカーテンのメーカーとのコラボレーションの依頼も受ける。

一年前に、オリジナルの生地と製品を販売するショップを札幌にオープンした。メーカーとのコラボとオリジナル商品の違いを尋ねると、

「手芸メーカーさんにはその世界観やテイストがあるので、それに合わせてデザインを変化させます。逆に、あるカーテンメーカーさんなどは、お任せいただけるので、もう少し自由にデザインします」

札幌の店「点と線模様製作所」には、オリジナルのプリント生地はもとより、バッグや小物の製品、オリジナルグッズ、手芸キットなどが所狭しと並び、遠方のお客様のためには通信販売も手がけている。

「お店では将来的にはワークショップや作品提案なども行っていきたいです」と意欲的に語る。




リトル・モリス 将来の夢

最後に今後への希望と将来について聞いてみた。

「自分の体を通して出てきたものを模様にするということ、自分の手で描いていくことは変わらずやっていきたいです。コンピューターで描く線には説得力も魂もこもらないと思っているので。そうやって60歳くらいまでは模様を作っていこうと考えています。その年齢にしか見えないこと、感じることがあると思うので。その頃には、モリスがタペストリーから椅子まで自分で美しく装飾していったように、誰かのためではなく、仕事とも関係なく、自分の場所を作りたいなと思っています。自分が子どもだったころの感覚にに戻っていきたい。住んでいる街もすごくいい街だなと思っています。春が来て雪が解けると新たにリセットされる感じ、これは雪国に住んでいる人ならではの感覚かもしれません」

程なく「雪解けの大地の模様」と、北の国のリトル・モリスの手帖には書き加えられるのかもしれない。




札幌のビーズ作家さんに、カルトナージュのワークショップを開催してもらったときの作品。







『ten to senの北国の模様刺しゅう』(日本ヴォーグ社)より、手刺しゅうの作品。

「シロツメクサの巾着」「鳥のティーコゼ―」「森のブックカバー」刺しゅうの盛り上がった刺し目の魅力をたっぷりと。






倉敷意匠計画室とのコラボ。動物や植物の模様で作ったマスキングテープ。軽やかでおしゃれなイメージ。







やわらかい透明感のある表現は水彩、刺しゅうの図案は細いペン、そしてクレヨンは大胆で素朴な線を描くときに。画材の力も借りて表現する。







プロフィール

岡 理恵子(おか りえこ)

模様作家。北海道東海大学大学院芸術工芸研究科卒。2008年から北海道の風景や動植物を題材に模様づくり、テキスタイルづくりを行う。著書に『ten to senの模様づくり』(グラフィック社)『ten to senの北国の模様刺しゅう』(日本ヴォーグ社)がある。







『手づくり手帖』Vol.08より

撮影/森谷則秋


ソーイングチーム編集スタッフ

ライタープロフィール

・ソーイングチーム編集スタッフ

日本ヴォーグ社ソーイング本の編集者たち(20~40代)。

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