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【読み物】押し花 ー植物標本と色彩ー ②

2021.04.14
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押し花

ー植物標本と色彩ー

前回から続く〉

アメリカの女優で後にモナコ公国公妃となったグレース・ケリー(1929-1982)も押し花を愛した一人です。

グレース公妃は、以下のように押し花の魅力を語っています。

 「素材となる花や葉の色、形、大きさは自然から与えられ決まったものです。その制約の中から、新たに押し花画を生み出していくところに喜びがあります。台紙となる紙のうえに、花びらをそっと置いて作業をしているとき、好きな針仕事や編み物をしているときと同じように、 とても静かな時間が訪れ癒されていきます。だんだん押し花画として形を成していくとき、うれしさがこみ上げ、 自然の恵みを通して自分を表現できたことに、深い満足感を覚えます。」

グレース公妃が押し花を楽しまれていた時代、専用の乾燥道具はまだなかったでしょうが(グレース公妃は電話帳を用いて植物を乾燥することを好んだようです。)彼女の言葉は押し花愛好家の普遍的、根源的な想いであり、現代においても広く一般に普及し続ける理由がこの言葉にあるように思います。

いずれにしても「色彩」を残せる技術が押し花の大切な要素であり、広く普及した要因の一つであったのです。


 
グレース公妃の押し花アレンジメントデザイン作品。




広がる表現と技術

押し花が一般市民の趣味・手工芸、延いては芸術作品として広く全国各地の教室で楽しまれるようになったのは、色彩を得た押し花の表現の多様性にあるでしょう。

はがきに季節の押し花をワンポイントあしらうのも楽しみ方ですし、花びら1枚1枚をまるで絵具のように扱い、壮大な押し花絵画を作成するのも楽しみ方の一つです。

しかし、押し花は出来上がったものをそのまま放置しておくと茶色く変色してしまいます。

作製時に水分、空気、紫外線に触れれば変色してしまうのと同じ理由で、作製後もそれらの要因で変色してしまうのです。

色彩を得たことによって普及した押し花ですから、色彩を失うことは押し花にとって致命的とも言えます。

そこで各メーカー・団体は、押し花の色を残す技術開発にしのぎを削ることになります。

そもそも有機物の色素は酸化や紫外線の影響で色素の分解が進みますので(いわゆる色あせ)、永久に元の色を保つことは困難です。

しかし、退色してしまう原因がわかっているのですから、その原因をできるだけ取り除いて少しでも長く色彩を保つ方法があるはずです。

そのような考え方で押し花を空気や紫外線に触れさせない様々な技術、商品が考案されました。

押し花を作製する時、作製後に押し花を保管する時、最終的に作品として押し花を活用する時。

そのすべてのシーンにおいて退色を防ぐ道具類が開発され、使用された結果、大変色彩豊かな押し花作品を生み出すことが出来ているのです。

最近では色を保つことから派生し、着色された押し花も多く見受けられます。

このような多種多様な技術、商品が生まれることによって、押し花はがきや押し花絵画、あるいはスマートフォンのケース、ネイルアートの素材など、広く一般に楽しまれている今日の押し花があるのです。


精緻な押し花絵画は、一見すると押し花でつくられているとは思えない程。
色の退色を防ぐために作品自体を空気・水分に触れさせないように密閉した上で額装されています。

〈次回に続く〉



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