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世界のペインティングスタイル

2021.05.12
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世界の国々には古くから伝わる技法があります。ここでは、ペインティングのさまざまなスタイルをご紹介します。

ノルウェーのローズマリング




「ペイントクラフトNo.8」 日本ヴォーグ社

北欧、ノルウェーの装飾絵付けから始まった伝統工芸です。テーマは一貫して「自然」ですが、具体的なモチーフ(建物や風景)を取り囲むようにして、写実的な、あるいはデフォルメされたバラやチューリップ、ヒマワリなどの花や、アカンザス(葉アザミ)の葉飾りが、流麗でおおらかな蔓の動きと連鎖するように美しく描かれているのが特徴です。

時代と共に様式が変わっても主体となる葉は常にアカンザスの葉です。ルネッサンス様式を忠実に受け継いだ証明なのです。



オランダのヒンダローペン




「ペイントクラフトNo.13」 日本ヴォーグ


ロシアに伝わるジョストボは、17世紀中国からヨーロッパへ伝わった漆塗りのミニチュアアートが始まりといわれています。

下地に黒やゴールド、シルバーを使い、赤、青、緑が透けて見えるバックグラウンドに、花や鳥や蝶が鮮やかな色で描かれています。図柄は、アウトラインをとってベースコートした後、オーブンで数時間乾かしてから葉と花のシェイドを入れ、ハイライトをつけます。鮮明なハイライトが、ジョストボの特徴となり絵にボリューム感が生まれます。


英国のナロウボートペインティング


オランダはトールペイントの盛んな国です。西暦1600年頃に、船乗りと彫刻家具師たちの間に生まれた美しい手彫り模様がそのまま、1700年から1800年頃にヒンダローペンの絵付け模様として使われ始めました。ヒンダローペンというのは町の名前からきています。

このように古くから描かれている絵付け家具の模様が、今もなお伝統工芸として描かれています。赤、紺、緑などを地色に花や鳥、カーリングを描くスタイルが特徴です。


「ペイントクラフトNo.7」 日本ヴォーグ社



ドイツのバウエルンマーレライ




「ペイントクラフトNo.7」 日本ヴォーグ社


南ドイツ、オーストリア、スイスのチロル地方を中心に伝わる伝統工芸です。庶民の間で描かれるようになったマーレライは、19世紀前半、庶民芸術(フォークアート)と呼ばれるまでに成長しました。

バラやチューリップ、ユリなど、身近な花々や円形につくった花飾り、かごに盛られたくだものなどが描かれているのが特徴で、それらすべての題材が宗教を軸とした生きるための願いや望みなのです。


「ペイントクラフトNo.6」 日本ヴォーグ社


イギリスの内陸を縦横に走る運河を行き来するナロウボート。このボートは幅わずか2.1メートル、長さが21メートルとアンバランスな形で、もともとはワーキングボートでした。女性たちもこの船で生活するようになり、レース編みで窓辺を飾ったり、刺しゅうをしたり、美しい装飾は人々から尊ばれました。それに刺激されたボートマンたちは、船に彫刻したり、絵を描いたりするようになったのです。

20世紀に入り、ディーゼルエンジンの発明とともに、「バラと城」のモチーフで美しく描かれたナロウボートの役割もここで終えたのでした。

フランスのパンチュールスールボア


「ペイントクラフトNO.6」 日本ヴォーグ社


芸術王国と自他共に認めるフランスの装飾芸術。パンチュールスールボアという木に絵付けをしました。ロココ時代に入り、貴族社会を中心に、絢爛豪華な装飾絵付けで一時代を築きました。

装飾絵付けの代表は、モビリエ・ポリクロムと呼ばれる家具で、庶民的な色を塗った家具を総称しています。アルザス地方では、嫁入り道具がより豪華に見えるように家具に絵を描いて持参させたりしました。時代と共に天井や壁などの室内装飾に用いられ、花や草、くだもの、ブーケなどがモチーフになっています。

オランダのアッセンデルフト


オランダの首都の北に、小さな街アッセンデルフトがあります。20世紀始め、古い時代のタンスやテーブルなどの家具や実用品が見つかり、美しく装飾が施されていました。17・18世紀、「白い職人」と呼ばれる人たちによって、安いモミの白木の家具が造られました。その家具に装飾を施したのが農民たちでした。長い冬の間、副収入を得るために始めたもので、家具だけでなく、いろいろな白木の生活雑貨に絵付けをしました。これがアッセンデルフトの始まりなのです。

図柄は生活に密着した聖書からのテーマと、花や鳥をテーマにしたものが主でした。


「ペイントクラフトNo.12」 日本ヴォーグ

スイスのパンチュールペイザンヌ



「ペイントクラフトNO.9」 日本ヴォーグ社


17世紀頃、アルプス地方(スイス、ドイツ、オーストリア)の上流階級の人々が、職人に創らせた彫刻や、絵を描いた家具などに装飾したものを見た農民たちが、手持ちの家具に模倣したところから「農民の絵」=パンチュールペイザンヌと名前がつけられました。

マルチローディング


「ペイントクラフトNo.7」 日本ヴォーグ社


オーストラリアのアーティスト、エニッド ホッシンガーさんにより生み出された技法です。

丸筆に何色もの絵の具をつけて、グラデーションや何種類かのストロークで描いていきます。気品のあるダイナミックなバラが特徴です。

KilnArt編集チーム

ライタープロフィール

日本キルンアート協会 STAFF・KilnArt編集チーム

日本キルンアート協会 STAFFは、KilnArtの様々なクラフトの講座企画や商品企画を通じ、作家やメーカーなどとのネットワークが自慢のチームです。
これまでの知識や実際の作品制作も手掛けてきた経験をもとに、皆さまにKilnArtの愉しみを紹介していきます。

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