第2回 お題「グラデーション刺しゅう糸」
「ステッチイデー」の人気連載「ステッチ&トーク」。
刺しゅう作家の西須久子さんと新井なつこさんがひとつのテーマを元にそれぞれ作品を作り、おしゃべりするページです。
対談の本編は「ステッチイデー」vol.29誌面でお楽しみください。
ここでは編集担当者を加えた3人で、お題以外のお役立ち内容もたっぷりお届けします。
どうしても言いたかった
編集部(以下・編) 連載第2回目ですが、お2人とも実は苦戦されたそうで…。
新井なつこ(以下・新) グラデーション糸は難題でしたねえ~。
西須久子(以下・西) 今回改めて向き合ってみたけど、グラデーションとか段染めの糸は奥が深いな~と思いました。きれいな糸だから、手に取ってみたい・使ってみたいと思う人は多いよね。
新 本編にもあるけど、本当に刺してみないとわからないんですよ。いろんなサンプルを見てもらえるように、西須先生と私で違う色のコロリを使ったんです。
西 コロリに色名がついてるの、おもしろいね。最初は気がつかなくて、ラベンダー系の4523を選んだら、色名が「北風」。春夏の号だからこれはナシだねって。
新 1本に何色も使ってあるからか、布の色も影響しますよね。
西 そうなの、青緑系のプリマヴェーラ(4506)を白い布にも刺してみたら、何かピンと来なくて。
新 私も、こんなに刺し直したことないですよ。作品自体はシンプルなんだけど。
編 そんなに…? 本当に、お手間をおかけしました。
新 コロリでころりって、逝くかと思っちゃった。
西 それ、どうしても言いたかったのね?
ハーダンガーは早めに
西 新井さんの作品はポンポンのグリーンが効いてるね。糸の中のグリーンより濃い色にしたのが正解!
新 コロリの中の1色から取ったら、ぼやけた印象になっちゃって。思い切って濃いめ・渋めの色にしてみました。
西 私も最初はサテンステッチ以外の8番糸をコロリの中の1色にしようと思ってたの。いろいろ試してみたけどしっくり来なくて、結局布に合わせた色にしました。あえての濃い色ね、勉強になるわ~。
新 刺しゅう界のヤンバルクイナ(編集部注・希少生物という意味らしいです)と言われるほどの重鎮なのに、この向上心!
編 西須先生のドイリーはハーダンガーだから、布の織り糸4本分のサテンステッチですね。
新 ハーダンガーにグラデーションのコロリを使うの、いいですね。すごくきれい。
西 単色で刺すより「あら」が目立たなくていいかも。(コロリは25番糸の)3本どりなので、布目を埋めるようにふっくら刺せますよ。普通はサテンステッチも8番糸だからね。
新 ハーダンガーは刺していくうちに糸が毛羽立ちやすいせいか、仕上がりがホコリを呼びがちというか、うっすら色が変わりがちというか…。
西 それはあるのよね~。はっきり言うと、汚れやすい。制作途中の布と糸をビニール袋に入れておくのも、静電気でホコリが集まるからよくないの。ハーダンガーは刺し始めたら早めに仕上げた方がいいです。特に白いものは注意が必要ね。
編 では、制作中はどうやって保管していますか?
西 作りかけの布も薄紙に包んでから筒に巻いています。前回のくり返しになるけど、自分の作品を大切に扱いたいからね。
編 今回使ったコロリ、他にはどんな使い方ができると思いますか?
新 シャツのポケット口とか前立てに、詰めてボタンホールステッチするとかわいいと思う。
西 ボタンを同じ糸でつけてもいいね。
新 白いシャツは明るい色、ダンガリーのシャツには濃いめの色が似合うんじゃないかな。
西 あとは、スミルナステッチ(スタンプワークで用いられるループ状のステッチ)に使ってもおもしろそうね。
古い色見本帳の活用法
西 そうだ新井さん、あの写真見せてあげて! 色見本帳の…。
新 はい、これですね。
編 これは、刺しゅう糸の色見本帳を切り離したもの?
新 そうです。古くなった色見本帳を列ごとにカットして、上に穴を空けてリングでまとめたの。買い足す時は必要な番号のある列だけ外して、お店に持って行けばいい。
西 これアイディアよね。それぞれの色を布の上に乗せて見られる。
編 本当、いいですね! 編集部でも作品の色番号を確認するのに色見本帳が必需品だから、今度やってみよう。
新 これね、私がインスタグラムにアップしたら西須先生から連絡が来て、「すぐ削除しなさい!」って。
西 「こんないいアイディア、イデーの連載用に取っておかなきゃダメじゃない!」って言ったの。
編 いろいろお気遣いいただき、ありがとうございます(笑)。
撮影/白井由香里(4枚目以外)
西須久子
刺しゅう作家。クロスステッチはもちろん、さまざまなステッチを用いてオリジナル作品を制作。各地で刺しゅう講師を務め、2018年10月よりヴォーグ学園横浜校にて教室開講中。著書「上手に刺せる、コツがわかる 刺繍教室」(日本ヴォーグ社)ほか多数。
https://www.tezukuritown.com/nv/g/g23428/
西須久子
新井なつこ
アパレル会社勤務後、イタリア・ミラノへ渡りデザイナーアシスタントを務める。刺しゅうは西須久子さんに師事。2018年10月よりヴォーグ学園東京校・横浜校にて刺しゅう教室を開講中。著書「超入門! スタンプワークレッスンBOOK」(日本ヴォーグ社)。
https://www.tezukuritown.com/nv/g/g20684/
https://www.instagram.com/natsuko1673/
「ステッチイデー」vol.29 (2019年4月11日発売)
特集は「刺しゅうサンプラー」。アルファベットから、花、動物、色などのデザイン、または技法などさまざまなテーマのサンプラーをご紹介します。そのほかにも、刺し子、季節の小もの、刺しゅうのアクセサリーなど、多彩なテーマでお届けします。仕立て方レッスン、作家取材ページなどもあり。作品の図案集と実物大型紙つき。
https://www.tezukuritown.com/nv/g/g105678/
最新号vol.33は2021年4月11日発売!お楽しみに。
ライタープロフィール
・キルトジャパン編集部