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洋服は作って楽しい、 着てうれしいに限る part.2

2021.02.01
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⇐part.1はこちらから








ララソーイングをスタートさせる

教室の課題から。衿ぐりと袖、ポケットの裏側にリバティプリントを使ったコート。プリント柄がアクセントに。ポケットは玉縁ポケットにアレンジを加えて簡単に作れるようにしつつ、デザインポイントにもなる形にしている。



その頃、カルチャー教室を開く知人に、布小物を教える講座をやってくれないかと頼まれる。人に教えることなどできないと断ったが、断りきれず月に1回だけという約束でスタートさせる。

「初めのふた月は生徒さんが2人だったんです。3カ月目に3人に。半年経たないうちに、教えられる限界の7人に増えました」

布小物を教え始めて、香田さんは愕然とする。世の中の人が驚くほど縫い物ができないことに。縫い物が得意な母、学校も職場も洋裁の専門知識のある人ばかりだった。そのような環境の中、一般の人のレベルを初めて知る。

「教室で使う材料は、型紙に合わせてカットしておき、あとは縫うだけの状態で渡すことにしました。カリキュラムも一度白紙に戻して組み直し、もっとレベルを下げたものに。でも、縫う部分がただ少なくて短時間で仕上がるだけではデザインが限られてしまい、面白くない。そうではなく、縫い上がりは素敵に見えながらも、縫う作業やアイロンをかける箇所をひとつでも多く省けないかと」

もともとパターンが好きで、デザインをするときもパターンから考えるのが常という香田さん。この工程とあの工程が一緒になったら1回縫うだけでできるなとか、そうするにはここに布を足せばよいかなど、よりよいやり方を求めて考え、実際に縫いながら探り、試行錯誤しながらパターンに修正をかけ、いかに楽に作れるかを考えるようになっていった。

凝った印象の仕上がりなのに、簡単にきれいに作ることができるパターンや作り方=“香田マジック”はここから始まった。

アパレル時代は美しく仕上げるために、また、いいものを作るために、縫う所が増えるのは当り前だった。しかしながら、生徒さんのために行うのは全く逆のこと。

これが彼女の作品の人気につながっていく。 約17年前、折しもリネンブームである。香田さんのリネンを使って布小物や洋服を作る講座は瞬く間に大人気に。

月に1回しかやらないと言っていたが、一度に教えられる人数は7名。気づいたときには月10回教えることになっていた。

講座数が増えることでキットの準備に時間がかかるようになり、ストックしている材料も増えていった。それらの荷物を持ってカルチャー教室に通うのがつらくなり、辞めてしまおうと考えた。しかしながら通ってくれている生徒さんのことが頭をよぎり、自分で教室をやろうと決意する。“ララソーイング”のスタートである。

「基本的には1回のレッスンで完成させて帰ってもらえるようにしています。生徒さんにはおうちにミシンがなくても大丈夫、ミシンを買う必要はないと言っています」

デザインのよさはもちろん、その手軽さや楽しさは多くの人に受け入れられ、今でも月に10レッスンを行っている。



布だけで仕上げるのではなく、一部に革を使うことで、見映え良く仕上がるよう工夫されたポーチ。



(上)ソーイングケースはカルチャー教室で教え始めた頃の課題。角を上手に縫って引き出せない人用に、縫った角ではなく、布を折ってできた角が端になるようなつくりにしてある。(下)山型の布と接着芯をすべて重ねて一度に縫い、口をまつるだけで作れるティーコゼー。作り方はイラストつきで、ていねいにわかりやすく、をスタート時から心がけている。



『手づくり手帖』Vol.17より

撮影/大西二士男


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ソーイングチーム編集スタッフ

ライタープロフィール

・ソーイングチーム編集スタッフ

日本ヴォーグ社ソーイング本の編集者たち(20~40代)。

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