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空飛ぶ羊に導かれて 竹崎万梨子さん part.3

2021.02.15
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紡ぎへのこだわりと縮絨


強く、濁りのないきれいな色。ファッションを生業としてきた竹崎さんのセンスが表れている。コーディネートの挿し色になりそうな美しさ。


竹崎さんの場合、織りに向かう前の糸づくりに掛けるウェートが高い。土のついた原毛を洗いながら、ほぐして、羊毛の独特の質感を感じながら染め、カーディングを経て糸を紡ぐまでの作業が全体の8割を占める。ただ異なる種類の原毛同士を混ぜることはほとんどしないという。原毛が本来持つ特徴を殺さないためだ。

紡ぎ車を回すときは、強く引き込まないし、細い太いのばらつきをなるべく出さないよう心掛けて紡いでいく。紡ぎの加減はどのようにコントロールするのだろうか。 「どういうものを作りたいかによって感覚的に糸の感じを見ながら変えていきます」 織り上がった布を仕上げていく過程で縮絨という作業がある。 「石鹸水の中で踏んだり、お湯の中で回したり、振ったりと、フェルト加減を調整しながら布にしていきます。縮絨の後の、干して乾いていく布は、空気を含んで魅力的な布へと変化します。その瞬間が一番好き」







今を大切にすること


「私は手の込んだ料理より、野菜や魚の味をそのまま味わいたい方だし、洋服も素材から入ります」と言うだけあって作品のアイテムは洋服に合わせるためのストールが多くなる。ファッションの仕事に長年携わってきた竹崎さんの「ストールは洋服の一部なんです」という言葉が印象的だ。身に着けたときに、その人の雰囲気をがらっと変えるだけの力があるから、人気があるのだろう。 今後は服地づくりや、ニットのための糸づくりにも挑戦したいという。 「糸づくりから作品になって誰かの手に渡るまでに最低でも1年はかかるでしょう。でもそんな先のことは考えないようにしています。一番大事なのは自分のモチベーションが落ちないようにすること。素材の面白さや楽しさを見つけて今を大切に、糸づくりと織りをしていきたい」 空飛ぶ羊を始め、さまざまな素材に寄り添いながら今を大切に……マイペースで新しいことに挑む竹崎さんの今後の創作に期待したい。







プロフィール 

竹崎万梨子(たけざき まりこ)



東京在住。手紡ぎ・手織り作家。主に羊毛で手紡ぎ、手織りのストール、生地などを制作する。川島テキスタイルスクール卒。卒業してからは全く織機には触れず、15年ほど前からもう一度、紡ぎと織りを志す。美しい色と雰囲気を持ったストールの人気が高い。個展開催多数。


『手づくり手帖』Vol.10より

撮影/姉崎 正




ソーイングチーム編集スタッフ

ライタープロフィール

・ソーイングチーム編集スタッフ

日本ヴォーグ社ソーイング本の編集者たち(20~40代)。

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