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第2回 お題「グラデーション刺しゅう糸」

2021.02.05
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「ステッチイデー」の人気連載「ステッチ&トーク」。
刺しゅう作家の西須久子さんと新井なつこさんがひとつのテーマを元にそれぞれ作品を作り、おしゃべりするページです。
対談の本編は「ステッチイデー」vol.29誌面でお楽しみください。
ここでは編集担当者を加えた3人で、お題以外のお役立ち内容もたっぷりお届けします。

どうしても言いたかった

編集部(以下・編) 連載第2回目ですが、お2人とも実は苦戦されたそうで…。

新井なつこ(以下・新) グラデーション糸は難題でしたねえ~。

西須久子(以下・西) 今回改めて向き合ってみたけど、グラデーションとか段染めの糸は奥が深いな~と思いました。きれいな糸だから、手に取ってみたい・使ってみたいと思う人は多いよね。

 本編にもあるけど、本当に刺してみないとわからないんですよ。いろんなサンプルを見てもらえるように、西須先生と私で違う色のコロリを使ったんです。

西 コロリに色名がついてるの、おもしろいね。最初は気がつかなくて、ラベンダー系の4523を選んだら、色名が「北風」。春夏の号だからこれはナシだねって。

 1本に何色も使ってあるからか、布の色も影響しますよね。

西 そうなの、青緑系のプリマヴェーラ(4506)を白い布にも刺してみたら、何かピンと来なくて。

 私も、こんなに刺し直したことないですよ。作品自体はシンプルなんだけど。

 そんなに…? 本当に、お手間をおかけしました。

 コロリでころりって、逝くかと思っちゃった。

西 それ、どうしても言いたかったのね?







ハーダンガーは早めに


西 新井さんの作品はポンポンのグリーンが効いてるね。糸の中のグリーンより濃い色にしたのが正解!

 コロリの中の1色から取ったら、ぼやけた印象になっちゃって。思い切って濃いめ・渋めの色にしてみました。

西 私も最初はサテンステッチ以外の8番糸をコロリの中の1色にしようと思ってたの。いろいろ試してみたけどしっくり来なくて、結局布に合わせた色にしました。あえての濃い色ね、勉強になるわ~。

 刺しゅう界のヤンバルクイナ(編集部注・希少生物という意味らしいです)と言われるほどの重鎮なのに、この向上心!

 西須先生のドイリーはハーダンガーだから、布の織り糸4本分のサテンステッチですね。

 ハーダンガーにグラデーションのコロリを使うの、いいですね。すごくきれい。

西 単色で刺すより「あら」が目立たなくていいかも。(コロリは25番糸の)3本どりなので、布目を埋めるようにふっくら刺せますよ。普通はサテンステッチも8番糸だからね。

 ハーダンガーは刺していくうちに糸が毛羽立ちやすいせいか、仕上がりがホコリを呼びがちというか、うっすら色が変わりがちというか…。

西 それはあるのよね~。はっきり言うと、汚れやすい。制作途中の布と糸をビニール袋に入れておくのも、静電気でホコリが集まるからよくないの。ハーダンガーは刺し始めたら早めに仕上げた方がいいです。特に白いものは注意が必要ね。

 では、制作中はどうやって保管していますか?

西 作りかけの布も薄紙に包んでから筒に巻いています。前回のくり返しになるけど、自分の作品を大切に扱いたいからね。

 今回使ったコロリ、他にはどんな使い方ができると思いますか?

 シャツのポケット口とか前立てに、詰めてボタンホールステッチするとかわいいと思う。

西 ボタンを同じ糸でつけてもいいね。

 白いシャツは明るい色、ダンガリーのシャツには濃いめの色が似合うんじゃないかな。

西 あとは、スミルナステッチ(スタンプワークで用いられるループ状のステッチ)に使ってもおもしろそうね。







古い色見本帳の活用法

西 そうだ新井さん、あの写真見せてあげて! 色見本帳の…。

 はい、これですね。



 これは、刺しゅう糸の色見本帳を切り離したもの?

 そうです。古くなった色見本帳を列ごとにカットして、上に穴を空けてリングでまとめたの。買い足す時は必要な番号のある列だけ外して、お店に持って行けばいい。

西 これアイディアよね。それぞれの色を布の上に乗せて見られる。

 本当、いいですね! 編集部でも作品の色番号を確認するのに色見本帳が必需品だから、今度やってみよう。

 これね、私がインスタグラムにアップしたら西須先生から連絡が来て、「すぐ削除しなさい!」って。

西 「こんないいアイディア、イデーの連載用に取っておかなきゃダメじゃない!」って言ったの。

 いろいろお気遣いいただき、ありがとうございます(笑)。


撮影/白井由香里(4枚目以外)



西須久子

刺しゅう作家。クロスステッチはもちろん、さまざまなステッチを用いてオリジナル作品を制作。各地で刺しゅう講師を務め、2018年10月よりヴォーグ学園横浜校にて教室開講中。著書「上手に刺せる、コツがわかる 刺繍教室」(日本ヴォーグ社)ほか多数。

https://www.tezukuritown.com/nv/g/g23428/



西須久子

新井なつこ

アパレル会社勤務後、イタリア・ミラノへ渡りデザイナーアシスタントを務める。刺しゅうは西須久子さんに師事。2018年10月よりヴォーグ学園東京校・横浜校にて刺しゅう教室を開講中。著書「超入門! スタンプワークレッスンBOOK」(日本ヴォーグ社)。

https://www.tezukuritown.com/nv/g/g20684/

https://www.instagram.com/natsuko1673/



「ステッチイデー」vol.29 (2019年4月11日発売)

特集は「刺しゅうサンプラー」。アルファベットから、花、動物、色などのデザイン、または技法などさまざまなテーマのサンプラーをご紹介します。そのほかにも、刺し子、季節の小もの、刺しゅうのアクセサリーなど、多彩なテーマでお届けします。仕立て方レッスン、作家取材ページなどもあり。作品の図案集と実物大型紙つき

https://www.tezukuritown.com/nv/g/g105678/


最新号vol.33は2021年4月11日発売!お楽しみに。



キルトジャパン編集部

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・キルトジャパン編集部

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