手の人 『越膳夕香さん』 part.03
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教えながら、教わっている
現在は、本の仕事(単行本出版の企画や雑誌からの作品依頼)を進行しつつ、自宅とカルチャースクールでの授業、手芸関連の店でのワークショップ、メーカーから依頼されるサンプル製作などで日々が埋まっていく。
「編集者として働いた経験があるから、本を作るのはやっぱり楽しいです。自分で企画を出す場合もありますが、共著や雑誌などでは想定外のお題を頂戴することもあり、新しいことに挑戦する機会をいただいて鍛えられてきましたね。でもそれらの製作にかかっているとつい家に引きこもりがちになるのですが、前から決まっているワークショップや講座があれば否が応にも外出します。締め切り前などは正直時間が惜しい…なんて思って出かけていくのですが、生徒さんたちと接するとパワーをもらって生き返れたりして。あ〜楽しかった、帰ったら続きをがんばろう、と思えたりするんです。生徒さんから教わることも多々ありますし、紙の上での発信と、顔を合わせての交流と、両方とも必要なんだなぁ、と思います」
取材中も、部屋の中のあれこれのストーリーをていねいに説明してくれた越膳さん。きっと授業でも、本づくりにおいても「人と共有したい、楽しいことを教えてあげたい」というスピリットが発揮されているのだな、と感じさせる。将来はどうしたいかと問いかけると、やはりこんな答えが。
「どこか広〜いところにミシンや織り機や編み機や革漉き機を並べて、作品も展示して、手芸本の詰まった書棚も置いて、のびのびとワークショップをやったりできるようなスペースが作れたらいいですねぇ。空いている廃校とかないかしら…」
これからも次々と手づくりの楽しさを発信し、手づくりファンを増やし、ファンから刺激をもらってまた新しい発信をする…そんな良い循環が、越膳さんのまわりに続いていくだろう。
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編み物誌からの依頼で制作した作品。
上は「かぎ針編みでアランを」というお題で、下は革と毛糸という異素材ミックスを楽しんだ。
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着物地や帯地、更紗を使った、和テイストの作品。
アンティーク着物屋で働いていた経験もある。
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かぎ針編みのバスケットにすっぽりとはまっているのは愛猫、ミケコさん。
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プロフィール
越膳夕香(こしぜん ゆか)
自宅アトリエでのフリースタイル教室「xixiang手芸倶楽部」を基軸に、ヴォーグ学園東京校、NHK文化センター青山教室で講師を務めるほか、各所でワークショップを開催している。
著書に、『仕上がりに差がつく バッグ作りの教科書』 『ファスナーポーチの型紙の本』 『がまぐちの型紙の本』 『バッグの型紙の本』(小社刊)『布で作ろう、革で作ろう わたしのお財布』( 河出書房新社)、『今日作って、明日使える 手縫いの革小物』( マイナビ出版)など。
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『手づくり手帖』Vol.23より
撮影/白井由香里
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ライタープロフィール
・ソーイングチーム編集スタッフ
日本ヴォーグ社ソーイング本の編集者たち(20~40代)。